7月24日通りのクリスマス



 別にクリスマス繋がりという訳ではなかったが、今日観よう
と思っていたのは「7月24日通りのクリスマス」。
 吉田修一の「7月24日通り」が原作で、中谷美紀主演の
電車男」の女性版といった感じのロマンティックコメディー
だ。


 長崎に生まれ育った、29歳(=彼氏いない歴)のサユリ
中谷美紀)は、市役所に勤める漫画オタクで、ちょっと妄想癖のある
地味な女性。サユリの妄想が始まると、彼女の周りは長崎の街から
ポルトガルリスボンの街へとの様変わりし、謎のポルトガル人親子
が登場して、勇気の出ない彼女を励ます始末。
 そんな彼女の王子様ランキングで常に1位にランクされてきた
憧れの先輩聡史(大沢たかお)とOB会で再会するサユリ。いつも
オドオドしていて人前で話をすることが苦手なサユリは、自分
の心に秘めた思いを聡史に何とか伝えようとするのだが・・。


 聡史に恋しているのではなく、恋に恋していた自分に気がつき、
挫折を味わった彼の本当の姿と向き合おうとする可愛い女性を
中谷美紀が好演している。地味な女性を演じていても、結構
可愛いのが唯一の難点のようだが、そこはご愛嬌といったところか。



 サユリを思いながらも、暖かく恋の行方を見守り続ける書店の
店員森山(佐藤隆太)、二枚目で人気者のサユリの弟を慕う冴えない
メグミ(上野樹里)、彼女の恋を応援する父親(小日向文世)、
父親の恋人(YOU)など個性的なキャラクターも登場し、観ていて
とても楽しかった。
 ロマンチックコメディーではあるけれど、夢と現実、笑わせ所
と切ない場面のメリハリが取れたなかなかの作品だと思う。


数日前の読売新聞にも、映画評が載っていたので参考までに
掲載しておきたいと思う。

「7月24日通りのクリスマス」東宝ほか)
ハリウッドも顔負け
 本作を見ると、日本映画の好調ぶりがよく分かる。ハリウッドのお家芸ともいえるロマンチック・コメディーを、実にうまく、日本に移し替えている。本家のお株を奪ってしまったような、愛すべき映画だ。

 主人公のサユリ(中谷美紀)は、ぼさぼさ頭で眼鏡をかけて、恋には無縁な女性。ところが、彼女の前に大学時代のすてきな先輩(大沢たかお)が現れ、完璧(かんぺき)なドレスアップで大変身。いい関係になりかけるが、先輩の元の彼女(川原亜矢子)が現れて……。

 典型的なシンデレラストーリーだが、村上正典監督ら作り手たちは、米国映画をよく勉強したのだろう。長崎の坂を歩くサユリの足を何度もとらえ、気持ちの変化を伝える演出のセンス。品のいいセット、大沢、佐藤隆太、YOUら助演陣の好演。そして熱演する中谷の涙顔。そのチャーミングさは、オードリー・ヘプバーンにも通じるように思えた。1時間49分。有楽町・日劇など。(近藤孝)

(2006年10月27日 読売新聞より)

http://www.724-christmas.com/