フーガBWV998〜序盤(1)

 今まで、それ程詳しく書いていなかったが、今年
弾くことに決めたバッハのフーガBWV998。使える時間
が少ないので、あまり練習は進んでいるとは言い難いが、
とにかく少しずつでもいいので、ギターに触るように
している。
 
 下の楽譜はそのフーガの序盤の最初の3段まで。見て
わかる通り、ギターの楽譜はピアノの楽譜とは異なり、
二段書きではなく一段書き。ピアノのように両手を使って
弾く訳ではなく、右手オンリーだから、当たり前だが、
ピアノの楽譜を見慣れている人は最初は戸惑うかも
しれない。そして、以前にも書いたが、この曲は最初の
2小節は気が抜けてしまうぐらいに簡単なことが分かる
だろう。



 見て、まず最初に気が付くのは、音符に数字が書いて
あることだろう。この数字はギターを弾く右手のためでは
なく、押える左手のためのもの。その数字によって、
押える指が決まっているのだ。クラシックギターでは、
左手の親指は使わないので、1が人差し指、2が中指、
3が薬指、そして4が小指ということになる。


 しかし、よく見ると0という数字もある。ピアノでは
絶対にあり得ないが、この0とは、どの指も押えない
で弾く開放弦であることを意味する。つまり、一般的
には、6弦のミ(低音)、5弦のラ、4弦のレ、3弦のソ、
2弦のシ、そして1弦のミ(高音)は押えなくても音が
出るので、0となる。これだけのルールが分かれば、簡単
な曲ならば、十分に弾くことが出来るのだが、ある程度
の曲になると、ギター独特でピアノにはない、難解な音取り
があるのだ。


 楽譜の最初から4つ目の音はミ(高音)、6つ目の音はシ
になっているが、音符のそばには、それぞれ、数字の4と3が
合わせて書いてある。これらの音ならば、さっきの原則に立ち
返れば、開放弦の0となっているはず。
 しかし、ここでは4や3、つまり小指や薬指で押えることに
なっている。おかしいと思うだろうが、あくまでも開放弦で
弾くのはそれぞれ、1弦や2弦でこれらの音を弾く場合だけ
なのだ。ということは、この場合、この2つの音は開放弦では
弾かないということを意味しているのだ。具体的には、2弦
の5フレットを押えて弾くとミ(高音)、3弦の4フレット
を押えて弾くとシの音が出る。


 ピアノの場合はひとつの音に対して、弾く鍵盤はひとつしか
ないが、ギターの場合は同じ音であっても、弾く弦が変わると、
開放弦だったり、押えなければならなかったりする訳だ。運指
が書いてある楽譜だと比較的音取りは楽だが、昨年選んだ
ヴィラ・ロボスの前奏曲第5番は運指が一切楽譜に書いていな
かったため、その音取りは本当に大変だったのだ。


 ギターのピアノにはない難しい点は、ピアノのように左手
は伴奏、右手は旋律というような明確な役割分担を、弾く右手
だけで行わなければならないこと。通常、伴奏やベース音は
主に親指が担当し、小指以外の残りの3本の指が旋律を担当
することが多いが、バッハの曲はそのあたりを明確に分けて
弾く必要がある。バッハの曲はさらに内声の部分が複雑な曲も
多く、ギターにおいてバッハが難しいのには、こんな理由が
あるのだ。
 楽譜では、下に線の伸びている音符と上に線が伸びている
音符があるが、下に線の伸びている音符はベース音で主に
親指で、上に線が伸びている音符は旋律で、小指以外の残り
の3本の指で弾く。


 これ以外にも、この曲を弾くには克服しなければならない
問題が山ほどあるのだが、それについてはまた次回という
ことにしたい。